大型旋盤 豆知識
2025.11.05
大型旋盤加工における熱膨張による寸法不良を防ぐためのポイント
ブログ・豆知識
大型旋盤加工では、加工物の質量が大きく、切削時に発生する熱の影響を強く受けるため、熱膨張による寸法誤差が避けられません。加工前後の温度差がわずかでも、最終寸法に大きく影響を与える場合があります。そのため、加工時の熱挙動を正確に把握し、温度管理・冷却・測定環境の最適化を行うことが、精度の確保と加工不良の防止につながります。本記事では、大型旋盤加工における熱膨張による寸法不良を防ぐための重要ポイントを詳しく解説します。
ポイント①:加工前にワークの温度を測定する
大型旋盤加工では、加工物自体が大きく、環境温度の変化を受けやすいことから、加工前にワークの温度を把握することが重要です。仮に、温度が高い・低い状態で加工を開始すると、加工の進行とともに急速に温度が変化し、熱変形が発生する恐れがあります。
そのため、加工前にワークの温度が基準温度と差分があるかを確認した上で、加工後の寸法差を見越した加工調整が必要となります。ただし、基本的には、加工前にワークを一定時間待機させ、温度を安定させたうえで加工に移ることが望ましいといえます。
ポイント②:材質に沿って熱膨張係数や加工中の温度を算出し、狙い値を決める
材質ごとに熱膨張の大きさは異なるため、加工前に素材の熱膨張係数を把握し、切削中に想定される温度上昇を踏まえて狙い寸法を設定する必要があります。例えば、炭素鋼とステンレス鋼では同じ温度上昇であっても膨張量が異なるため、同じ加工条件であっても仕上がり寸法に差が出ます。具体的には、切削によってワーク温度が数十度上昇することもあり、加工後に冷えた段階で寸法が収縮するケースも多く見られます。
このような熱挙動を見越し、加工時点で“あえて大きめ”に仕上げるなど、温度を考慮した狙い値設定が不可欠です。設計図面上の寸法だけを追うのではなく、加工中と冷却後の寸法差を計算して最終寸法を合わせることが、大型ワークの精度の要となります。
ポイント③:加工中に熱をため込ませないために冷却を徹底する
熱膨張による寸法不良を抑えるためには、加工中に発生する熱をため込ませないことが極めて重要です。そのため、適切なクーラント液の選定と流量の確保は、精度を保つうえで欠かせません。特に大型ワークは切削面積が広く、工具も高負荷状態になりやすいため、クーラントが十分に届かないとワーク温度が急激に上昇し、加工中の膨張量が大きくなってしまいます。
さらに、連続加工が続くとクーラント自体が温まり、冷却効果が低下することがあるため、一定時間ごとに加工を止めて冷却期間を設けることも有効です。加工サイクルの中に温度を均一化させる“クールダウン工程”を組み込むことで、加工が進むほど温度が上がり、寸法誤差が累積していく事態を防ぐことができます。
ポイント④:測定前に測定器の温度を測定する
高精度が求められる大型旋盤加工においては、加工物だけでなく、加工中に使用する測定機器の温度管理も必須です。仮に、加工中に使用する測定器が基準温度からずれている場合、ワーク側の温度が適正であっても、測定値に誤差が生じてしまいます。結果として、測定値の誤差を考慮せずに、加工が進んでいくため、寸法に大きな誤差が生じる可能性があります。
そのため、基本的には測定機器の温度測定を行った上で、測定することを推奨します。測定者の手の温度が測定器に伝わることで誤差が生じるケースもありますので、注意が必要です。
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