大型旋盤 豆知識
2024.09.06
大型旋盤加工に用いられる”インコネル”と”インコロイ”の違い
ブログ・豆知識
大型旋盤加工とは、その名の通り、大型サイズの旋盤加工のことを指します。産業機械やプラント、エネルギー設備、航空機部品などの製造において、精密な寸法で高強度の部品が求められるため、大型旋盤加工は必要不可欠といえます。
これらの用途では、強度や耐久性が優れた素材が使用されるケースが多く、中でも”インコネル”と”インコロイ”といったニッケル系合金は、優れた耐熱性や耐腐食性を持ち、過酷な環境での使用が可能なため、大型旋盤加工においてよく利用されます。当記事では、意外と知らないこの2つの素材について詳しく解説します。
インコネルとは?
インコネル(Inconel)は、ニッケルを主成分とするニッケルクロム系合金であり、ニッケル含有量が50%以上です。インコネルは、非常に高い耐熱性、耐酸化性、耐食性を誇り、特に高温環境での機械的強度が優れています。熱によるクリープ(塑性変形)に強く、高温での使用にも適しています。
インコネルの主な特徴
優れた機械的特性:極低温から高温まで、広範囲な温度環境で優れた機械的強度を持ちます。
高温酸化に対する耐性:インコネルは、加熱時に安定した酸化膜を形成し、表面を保護するため、酸化に強いです。
優れた耐酸性:硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの酸に対して高い耐食性があります。
応力腐食割れに強い:塩化物環境での応力腐食割れに対して高い耐性を示します。
インコネルが使用される主な用途
航空宇宙産業:タービンブレード、ロケットエンジン、宇宙船の構成部品に使用され、極めて高い温度にさらされる環境で重宝されます。
原子力産業:原子炉の構成部品や配管にも使用され、高い耐久性が要求される場所でも活躍します。
化学工業や石油化学装置:腐食性が高い化学物質に耐えることができるため、化学プラントや石油精製装置に使用されます。
インコロイとは?
インコロイ(Incoloy)は、鉄を含むニッケル鉄クロム系合金であり、ニッケル含有量は50%未満です。インコネルと比較すると、コスト面でのメリットがあり、加工しやすいという特徴があります。また、ステンレスと比較すると耐食性も優れており、高温環境や海水、塩化物環境での使用に適しています。
インコロイの主な特徴
高温環境での機械的強度:インコロイは高温でも機械的強度を保ち、クリープ破断に強いです。耐酸化性と耐浸炭性:高温下での酸化や浸炭に対する優れた耐性を持ち、過酷な環境でも長期間使用できます。
加工性に優れる:インコロイは、ステンレス鋼と同様に加工しやすく、旋盤加工や溶接が比較的簡単に行えます。
海水や塩化物に対する耐食性:インコロイは、海洋環境や塩分を含む環境での耐食性が高く、石油やガス産業で多く使用されています。
インコロイが使用される主な用途
発電所や石油化学工場:高温のガスや液体に接触する配管、熱交換器、化学プラントの設備などに使用されます。
熱処理装置:高温下で動作する装置の部品や炉の構造材に使用されています。
海洋設備:海水に強い耐食性を持つため、オフショアの石油プラットフォームやガス井の配管に利用されています。
材質選定のポイント
インコネルとインコロイは、それぞれ異なる特徴を持つため、用途に応じて適切な材質を選定することが重要です。以下のポイントに注目して材質を選定する必要があります。
耐熱性を重視するなら”インコネル”:インコネルは、非常に高温に耐え、特に1000℃を超えるような環境で優れた性能を発揮します。一方、インコロイも高温に強いですが、インコネルほどの耐熱性はありません。
加工精度を重視するなら”インコロイ”:インコロイはインコネルに比べて加工しやすいという利点があります。大型旋盤加工において加工精度を重視する場合には、インコロイのほうが適しています。(※ただし、インコネルであっても、高精度な加工は十分に可能です。)
材料コストを重視するなら”インコロイ”:インコロイは、鉄の含有量が多いため、インコネルよりも材料コストが低くなります。したがって、コストを抑制したい場合や、そこまで高温・過酷な環境での使用が想定されない場合には、インコロイが最適といえます。
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